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HoloeyesのXRや空間コンピューティング技術が医師の働き方を改革する

外科医には「やりがいのある仕事」「高度な技術」「高い報酬」といったポジティブなイメージがあります。

その一方で「過酷な労働環境」「長時間の拘束」「訴訟リスク」といったネガティブな側面も存在します。

2024年からの医師の働き方改革では、週60時間以内の勤務が推奨されていますが、現場でのハードワークは完全には解消されていないのが現状です。

このような状況の中で、Holoeyes株式会社は医療用画像処理ソフトウェア「Holoeyes MD」等を提供しています。

Holoeyes株式会社

今回は、Holoeyes株式会社の代表取締役杉本真樹様より医療用画像処理ソフトウェアについてお話をお伺いしています。

テクノロジーで外科医療をより良い未来へ前進させる

テクノロジーで外科医療をより良い未来へ前進させる

御社の業務内容について教えていただけますでしょうか?

Holoeyes株式会社は、2016年に設立しました。「医用画像と医療知見を空間的に再現・共有し医療の最適化を実現する」ことをミッションとして掲げています。

事業内容は、医療領域における、臨床・トレーニング・教育向けのVRアプリ等開発及びサービス事業、データ提供サービス事業です。

ウェアラブルヘッドセットに医用画像が提示できる「Holoeyes MD」、仮想空間でつながる遠隔共有カンファレンスサービス「Holoeyes VS」、VRによる医療教育プラットフォーム「Holoeyes Edu」という3つのバーチャルリアリティソフトウェアを提供しています。

開発のきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

外科医が専門医や指導医になるには、膨大な時間と労力を要します。10年から20年の間、数々の症例を経験し、高度な技術と臨床判断力を養うことが必要です。

そこで、手術室における複雑な手技をより精密に、またはより迅速に行うための“ナビゲーションのような機能“があるといいと考えました。

Holoeyes MDを使用することで、ベテラン医師の経験や直感(いわゆる暗黙知)を、具体的な視覚情報として共有できます。これにより、若手医師へのスムーズな技術伝承が可能になります。

外科医の減少が進むなか、テクノロジーでアシストして、外科医療をより良い未来へ前進させたいというのが私の想いです。

VRソフトウェアで臓器を空間に可視化

VRソフトウェアで臓器を空間に可視化

医療用のバーチャルリアリティソフトウェアとはどのようなものなのでしょうか?

患者さんの臓器の画像からポリゴンデータを書き出し、弊社のサービスサイトにアップロードしてVRデータに変換します。VRデータを読み込むと、ウェアラブルヘッドセットで医用画像の閲覧が可能です。

ウェアラブルヘッドセットを着用してVR空間に入り、背景を透明にすると臓器が空中に浮いて見えます。これを手術中に見られる「Holoeyes MD」、遠隔地にいてもVR空間でみんなが共有できる「Holoeyes VS」、安価なウェアラブルヘッドセットで学生の授業に使える「Holoeyes Edu」という3つのサービスを提供しています。

本技術で目指しているのは、医療現場におけるプロセスを効率化し、安全性を向上させることです。手術の過程を詳細に記録することで、診療の透明性を高め、訴訟リスクを軽減することが期待されます。

訴訟の話が出ましたが、手術にはどのような難しさがあるのでしょうか?

例えば、砂場に埋まっているシャベルを取り出すためには砂を掘り起こす必要があります。手術でお腹を開けると脂肪ばかりが見え、ガンや血管の位置が不明確です。

もし誤ってガンを傷つけてしまうとガン細胞が散ってしまいますし、血管を傷つけてしまうと大出血のリスクがあります。

事前にガンや血管の位置がわかり、切除しても安全な場所が把握できれば、大出血を防ぎながらガンを摘出できるようになります。

ウェアラブルヘッドセットで学ぶ新たな医療教育のスタンダード

御社の製品は若手医師の教育にどのような効果が期待できるのでしょうか?

ウェアラブルヘッドセットを使用した立体空間的な教育は、手技の再現性を高め、異なる角度からの視点で手術の流れを学ぶことが可能です。

また、録画機能を活用することで、実際の手術データを用いたリアルなシミュレーション教育が実現します。

弊社の製品は、教育期間の短縮や、研修医・若手医師の技術向上に寄与することが期待できます。

御社の製品はどの程度普及しているのでしょうか?

「Holoeyes MD」は、令和5年9月1日から特定診療報酬算定医療機器として保険適用されました。2024年9月時点のデータで、全国の約60施設で導入され、5000件程度の手術で使用されています。

消化器外科学会の学会企画セッションで「VRゴーグル」がテーマとして取り上げられるなど、徐々に認知度も上がっています。

内視鏡によるステント挿入、肝移植、脳血管治療など、さまざまな診療科での利用が進んでいます。

医療画像を5分でVRデータにするHoloeyes

御社の強みはどのようなところでしょうか?

通常、医療器具を開発するには臨床試験なども含めて10年ほどかかることが一般的です。しかし、弊社には医療従事者やエンジニア、医療機器メーカー出身者など多様な人材が揃っており、他社よりも迅速な開発が可能です。

患者さんの医用画像のデータをHoloeyesサービスサイトにアップロードすると、5分でVRデータに変換でき、ウェアラブルヘッドセットに提示できます。他社が特定の疾患に特化したVRソリューションを提供する一方で、弊社はすべての診療科に対応可能です。

患者さんのデータは全てクラウド上のデータベースに蓄積されており、そのデータに基づき、AI(人工知能)が診断や手術をアシストする情報を提案することで、手術中のリスクを最小限に抑え、安全で効率的な手術が期待できます。

御社の製品で外科医の減少を食い止めることはできるでしょうか?

かつてロボットが日本に導入された際、一時的に外科医の減少が止まりました。ロボットは視覚を補い、安定した動作が可能なため、高齢の外科医の技術を延命させたのです。弊社の製品によって、再び外科医の減少を食い止めたいと考えています。

弊社製品のユーザーである医師がメディアに取り上げられたり、学会賞を受賞したり、助成金を受け取るなど、弊社の製品を使うことで患者さんだけでなく医師にもメリットがもたらされています。

医療現場での最先端技術の活用が、若手医師にとって魅力的なキャリアパスとなり、外科医という職業に対する関心が高まることを期待しています。

Holoeyesの海外展開と未来のビジョン

Holoeyesの海外展開と未来のビジョン

御社は海外展開もされているのでしょうか?

サウジアラビアやエジプトで試験導入していただいています。中東地域では、日本と比べてCTやMRIの導入が進んでいない地域もありますが、CTやMRI機器と一緒に弊社の製品を導入することで、医療インフラの向上が図れると期待しています。

NTTや総務省や経産省とともに、シンガポール、マレーシア、台湾に展開しています。アジアの発展途上地域で医療を底上げするために、教科書で教えるのではなく、教育向けVRアプリで動きごと教えたいというお話もいただきました。

私の留学時代の友人がスタンフォード大学におり、アメリカ市場での展開も視野に入れています。アップルのApple Vision Proの発売日にVision OSアプリ「Holoeys Body」をリリースし、同日にスタンフォード大学で医療遠隔カンファレンスを実施しました。

御社の今後の展望などはありますか?

休日も呼び出される外科医が多く、業務の効率化が急務となっていますが、その改善に取り組む医師はまだ少数派です。私は、医師が患者さんの診療プロセスを広い視野で捉え、テクノロジーを活用して効率化することが必要だと考えています。

東京医科歯科大学と東京工業大学が統合されて、東京科学大学が設立されることになりました。私は医学と工学を融合させた新しい学問分野、医工学を目指しています。

スタンフォード大学には、デザイン思考をもとに医療機器イノベーションを牽引する「バイオデザイン」という人材育成プログラムがあります。私も医療の知識に加え、工学やビジネスの知識を持った人材を育てたいと考えています。

終わりに

Holoeyes終わりに

key point

  • Holoeyes株式会社は、ウェアラブルヘッドセットに医用画像が提示できる「Holoeyes MD」、遠隔共有カンファレンスサービス「Holoeyes VS」、医療教育プラットフォーム「Holoeyes Edu」という3つのVRソフトウェアを提供している。
  • 患者の医用画像データをHoloeyesサービスサイトにアップロードすると、5分でVRデータに変換でき、ウェアラブルヘッドセットで閲覧できる。
  • Holoeyes MDの使用により、ベテラン医師の暗黙知を視覚情報として共有することで、若手医師へのスムーズな技術伝承が可能となる。

いかがでしたでしょうか?

かつては、手術が必要になっても医師から今ほど詳しい説明はなく、患者から質問しづらい雰囲気の医師もいました。

しかし、1997年にインフォームド・コンセントが法制化され、患者が治療方法を選択する時代となりました。

それでも、医師からの説明を十分に理解できない患者も多いのが現状です。

3Dの医用画像なら、レントゲン写真やCT 画像より患者が自身の体内の状態を理解しやすくなるでしょう。

ウェアラブルヘッドセットをかけて自分の内臓を見ながら医師の説明を受ける。近い将来、そんな光景が当たり前になるのかもしれません。

【学会企画セッションでVRの発表】第79回日本消化器外科学会総会にて、弊社CEOが発表しました - Holoeyes株式会社
https://holoeyes.jp/topics/2024-07-17_the79th-jsgs-2024/

PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部

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