働く男性の健康課題改善を支援する「男性更年期プログラム」とは
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2024.09.05 働く男性の健康課題改善を支援する「男性更年期プログラム」とは

働き盛りの人たちが集まると健康や病気の話題になることがあります。

女性の場合、更年期のつらさが語られることはありますが、男性の場合は、体調がすぐれなくても更年期というワードが出ることはほぼないのではないでしょうか。

仕事が大変だから、ただ疲れているだけだから、ゴルフにでもいけば治るだろうという話になりがちです。

このような状況のなかで、株式会社LIFEM(ライフェム)はポーラ・オルビスグループの男性従業員向けに「男性更年期プログラム」を実証導入することを発表しました。

今回は、株式会社LIFEMの代表取締役 菅原誠太郎様より「男性更年期プログラム」についてお話をお伺いしています。

オンライン診療とセミナーの「男性更年期プログラム」

オンライン診療とセミナーの「男性更年期プログラム」

御社の業務内容について教えていただけますでしょうか?

株式会社LIFEMはオンライン診療や相談を活用した法人向けフェムテックサービス「ルナルナ オフィス」を運営しています。フェムテックとは「female」と「technology」の造語で、女性の健康課題をテクノロジーで解決することです。

「ルナルナ オフィス」には「月経プログラム」「妊活相談プログラム」「更年期プログラム」があり、ライフステージに合わせてさまざまな健康課題の改善を支援しています。

ポーラ・オルビスグループが既に導入済みの女性向けプログラムに加えて、男性従業員を対象に「男性更年期プログラム」を提供することになりました。

「男性更年期プログラム」の概要を教えていただけますでしょうか?

「男性更年期プログラム」は、働く男性が感じている更年期症状による不調の改善を支援するプログラムです。

泌尿器科医師によるセミナーで、男性更年期とは何か、どのような症状や治療方法があるかなどを説明します。その後受診を希望する人は医師のオンライン診療を受診できます。

医師の判断のもと漢方を処方したり、必要に応じて対面での受診を勧めたりという流れです。

企業様に対しては、プログラムへの参加の結果、仕事のパフォーマンスや社員の健康状態がどれくらい改善されたかをレポートにまとめてお渡しします。

男性更年期障害は労働生産性にも影響を及ぼす

男性更年期障害は労働生産性にも影響を及ぼす

男性更年期障害とはどのようなものでしょうか?

男性更年期障害は概ね40歳以降に男性ホルモン・テストステロンの減少によって起こります。男性ホルモンの減少は加齢でも起こりますが、ストレスが大きいとホルモン値が下がり、うつ症状が出る場合があります。

よくある症状は不眠、イライラ、不安になる、疲労しやすい、筋肉の衰え、性欲の衰えなどです。集中できない、やる気がでないなど、労働生産性への影響も懸念されます。なかには、自殺念慮が生じ、亡くなってしまう人もいます。

治療法としては、漢方薬の処方や男性ホルモン補充療法が有効とされています。医師が診察し適切な治療をすれば良くなることが多いのですが、男性更年期障害や治療法に対する認知はまだ低いです。

「男性更年期プログラム」を導入する背景には何があったのでしょうか?

「男性更年期プログラム」導入前に、ポーラ・オルビスグループでは35歳以上の男性従業員を対象としたアンケートを行いました。(※LIFEMによるインターネット調査 有効回答数:ポーラ・オルビスグループ35歳以上の男性従業員371名 調査実施期間:2023年10月2日~10月16日)

男性更年期症状と思われる不調を感じるかという質問に、半数以上が何らかの不調を感じていると回答しています。しかし、男性更年期症状への対処法を尋ねたところ、半数近い46.2%が「我慢する」と回答し、「医療機関を受診する」と回答したのは3.0%でした。

また、更年期症状の改善が期待できる漢方やホルモン充填療法については70%以上が知らなかったと回答しています。男性更年期症状や治療法についての知識啓発が必要と思われる結果でした。

更年期症状が出ても受診しない理由とは

更年期症状が出ても受診しない理由とは

もともとの女性向け「ルナルナ オフィス」を立ち上げたのはどのようなきっかけだったのでしょうか?

現役の救命救急医師として勤務するなか、体調が悪くても病院に行かずに我慢している人が多いと思っていました。

病気になってから来院する患者さんを、病院で医師が待っているだけでなく、不調を感じている人に来院以外の方法で症状の軽いうちに医療が介入できる方法はないかと考えました。勤務中であると受診が難しい生産年齢人口の人たちがどうしたら受診できるかと考えた結果、オンライン診療を行うことにしました。

生産年齢人口において、女性はホルモンバランスの変動によりライフステージごとに多くの健康課題を抱えやすい傾向にあり、潜在的に患者なのに我慢している人も女性が多かったです。

更年期症状が出る女性は何割くらいいるのでしょうか?

厚生労働省のデータでは、女性の場合、更年期障害と診断されたことがある/診断されている人は40代が3.6%、50代が9.1%、更年期障害の可能性があると考えている人は40代が28.3%、50代が38.3%となっています。(厚生労働省 「更年期症状・障害に関する意識調査」2022 年7月26日)

更年期障害の疑いがある人は全体の約3割で、受診する人はその中でもさらに少ないです。

更年期障害の症状があっても受診しない人が多いのは、更年期障害があまり認識されていない、認識していても病院に行く暇がなかったり、マイナスイメージがあるといった理由が多いようです。

更年期障害についてのリテラシー向上を支援

更年期障害についてのリテラシー向上を支援

更年期障害は何科を受診すればよいのでしょうか?受診すれば治りますか?

女性に関しては更年期障害を扱っているクリニックは大変多いので、一般的な産婦人科でよいと思います。

男性に関しては、泌尿器科や内科で男性更年期を扱っているクリニックがあります。ホームページなどで、男性更年期障害で検索していただければよいでしょう。

更年期障害は診断が難しいところがあります。ホルモン値の減少や症状から診断できればよいのですが、他の病気が疑われることも想定されます。これらを除外して適切な診断、治療ができれば比較的よい治療成績が得られると思います。

専門医による啓発セミナーで職場のムードは変わりますか?

ムードは数値化しづらいのでどれだけ良くなったとは言えませんが、女性向けのセミナーを開催する場合、男性従業員にも受講してもらいます。そうすると女性から「男性の上司に話しやすくなった」というコメントがあがってくることがありますので、セミナーの効果はあると思っています。

女性の月経困難症のセミナーを受講した男性で「自宅で奥さんに優しくなりました」という人もいました。知識をつけることが大切なのだと思います。

男女がともに働きやすい職場環境の構築を目指す

男女がともに働きやすい職場環境の構築を目指す

プログラムに関心を持つのはどのような企業でしょうか?

業種はバラバラですが、従業員が1000人を超えるような大企業が多いと感じています。労働生産性を向上させたいという企業様がある一方で、女性従業員をきちんとサポートしたい企業様も多くあります。

ポーラ・オルビスグループは女性従業員が多いため、女性の健康課題を改善するプログラムにフォーカスしています。

建築系の企業様は女性がとても少ないのですが、少ないからこそ大切にしたいという企業様もいらっしゃいます。

御社の今後の展望などはありますか?

まずは導入する企業が増え、企業が従業員の健康課題の改善を支援するということが当たり前になるといいです。 

ルナルナ オフィスは女性のためのプログラムとして展開してきましたが、2024年3月よりポーラ・オルビスグループへ「男性更年期プログラム」の実証導入を始めました。

LIFEMが目指す「誰もが働きやすい社会の実現」のため、今後は男性の健康課題にも注目していきたいと考えています。 

また、女性の「月経プログラム」「妊活相談プログラム」「更年期プログラム」に関しても現在のサービスをブラッシュアップしていき、ニーズがあれば他の領域のサポートも検討していきたいと思います。

終わりに

健康課題は企業が取り組むべき課題

key point

  • 「男性更年期プログラム」は、働く男性が直面する健康課題の改善を支援するプログラムである。
  • 男性更年期障害は概ね40歳以降に男性ホルモンの減少によって起こり、不眠、イライラ、疲労感、集中力の低下などで労働生産性への影響も懸念される。
  • 男性更年期症状があっても半数近い46.2%は何もせず我慢し、医療機関を受診するのは3.0%。
  • 更年期症状は漢方やホルモン充填療法で改善が期待できるが、70%以上がそれを知らない。

いかがでしたでしょうか。

経済産業省の試算によると、日本の女性の月経随伴症状による労働損失は4,911億円にのぼるそうです。

男性更年期はあまり認知されてきませんでしたが、女性ほどではないにしても、試算してみれば無視できない損失になるでしょう。

健康課題は、これまで個人的な問題として捉えられていたため、女性も男性も、多くの人たちが仕事に穴を開けられないからと、痛みやつらさを我慢して働いてきました。

しかし、これからは健康経営の観点からも従業員の健康管理を行うことを投資と捉えて、企業が取り組むべき課題なのではないでしょうか。

株式会社LIFEM
https://lifem.co.jp/

PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部

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