デジタル課税の発効を2025年に延期
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2023.08.05 デジタル課税の発効を2025年に延期

経済協力開発機構(OECD)は12日、国際的な巨大IT企業の税逃れを防ぐ「デジタル課税」の枠組みを取りまとめた。これまでの計画から1年延期した2025年までに多国間条約の発効を目指す。

デジタル課税は、ITサービスなどの利用者のいる国・地域において、国内に支店や工場などの物理的な拠点を持たなくても課税ができるようにする仕組みだ。これにより、米アルファベット傘下の米Googleや米メタ(旧フェイスブック)など「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業を筆頭に、国境を超えてサービスを提供する企業に対して、課税が認められることとなる。

これまで、これらの巨大IT企業の拠点は米国に集中しており、税収が各国に行き渡らない現状があった。米国のみに税を納め、実際にサービスを提供している国や地域で納税しないシステムを改める。

売上高が200億ユーロ(約3.1兆円)超で、税引き前の利益率が10%を超える企業を対象とする。世界で該当するのは100社程度とのこと。対象となるのはIT企業に止まらないが、製造業などでは利益率10%を超えにくい。

多国間条約の交渉はOECDが実施。日米欧や中国など138カ国・地域が合意したが、ロシアやカナダなど5カ国は合意に至らなかった。英フィナンシャル・タイムズ紙によると、OECD租税政策・管理センター所長のマナル・コーウィン氏は「138の法域から成果報告書の承認を得ることができて大変うれしく思う」と話したという。

米国の批准は不可欠

日本では巨大IT企業への課税を進めてきた。財務省によると、売上高が200億ユーロ以上かつ税引き前利益率が10%以上の日本企業としては、NTTやKDDIなど11社が挙げられるという。

こうしたデジタル課税導入には米国の批准が不可欠だ。米国の条約批准には上院の3分の2の賛成が必要であり、米国が批准しない場合には世界的な税制改革が実現しない可能性がある。

また、カナダはデジタル課税の適用を1年延期することに反発しており、米国との貿易摩擦が予想される。デジタル経済の発展に対応したデジタル課税の導入に注目が集まる。

【関連リンク】

・「デジタル課税」創設へ、条約まとまる 巨大IT企業に市場国も課税(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASR7D67HLR7DULFA01K.html

・Ban on national digital taxes extended to buy time for OECD deal(Financial Times)
https://www.ft.com/content/244429fb-fe2c-41e5-afcc-882ea9a399d4

TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock

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