ユーザーと解体業者をマッチングするプラットフォーム「解体の窓口」
総務省統計局の平成30年住宅・土地統計調査によると、空き家数は848万9千戸で、全国の住宅の13.6%を占めています。
自分が住むつもりはないけれど解体する決心もつかず、どうすればよいか考えあぐねている人も多いのではないでしょうか。
このような状況のなかで、バリュークリエーション株式会社は、2020年7月から解体工事を希望する顧客と解体業者をマッチングするプラットフォーム「解体の窓口」を提供してきました。
今回は、バリュークリエーション株式会社の田中佑弥様に、解体費用AIシミュレータの精度が向上した「解体の窓口」についてお話をお伺いしています。
バリュークリエーション株式会社はデジタルマーケティングの会社で、マーケティングDX事業、デジタルメディア事業、不動産DX事業の3事業があります。
車や保険に価格比較サイトがあるように解体業界にもそのようなサイトはありましたが、一般ユーザーの方はほとんどご存じありませんでした。何か独自のものを作れないかと検討し、2020年7月から始めたのが「解体の窓口」です。
「解体の窓口」は、弊社のマーケティングとDXのノウハウで作った、これまでの一括見積サイトとは異なるプラットフォームです。
「解体の窓口」はどのようなものなのでしょうか?
解体の相談をしたいユーザーさんと解体業者さんの間にコンシェルジュが介在して対応します。弊社はユーザーさんの個人情報を開示せずに業者さんに見積もりを依頼するので、しつこい営業電話がかかってくることはありません。
物件の情報を入力するとAI解体費用シミュレータで相場がわかり、逆オークションで最安値がわかるので、最適な解体業者さんを選んでいただけます。ユーザーさんのご利用は無料です。
これまでに1700社を超える解体業者さんにご加盟いただき、22,000人のユーザーさんにご利用いただいています。
コンシェルジュの介在でユーザーと解体業者双方にメリット
サービスの流れについて教えていただけますでしょうか?
建物の構造、坪数、地域など物件の情報をホームページ上で入力していただくと自動シミュレーション金額が表示されます。
具体的な見積もりや対応できる業者さんを知りたい場合は物件の写真を送っていただき、物件の周辺の状況などをオンラインで情報共有していただきます。
入札は逆オークション形式です。各業者さんはお互いの見積もりを見られるので、普通のオークションの逆でどんどん安くなっていきます。
ユーザーさんが気に入った業者を選び、価格に納得されたら成約です。ここまでの一連の流れをすべてオンラインで提供いたします。
一括見積サイトとはどのような違いがあるのでしょうか。
一括見積サイトの場合、ユーザーさんに複数の業者さんから一斉に営業電話がかかってきます。知識のないユーザーさんは業者さんから見積もりの説明をされても適正なのかどうか判断できません。
解体業者さんは、人材不足のなかで見積を作成し、ユーザーと交渉して契約を獲得しなくてはなりません。
「解体の窓口」は、ユーザーさんと解体業者さんの間にコンシェルジュが介在することによって、客観的に適正な価格と思われる金額を提示した業者さんを選ぶことができ、業者さんは限りあるリソースを有効活用できます。
AI解体シミュレーションはどのようなものでしょうか?
建物種別(住宅・アパート・ビル・店舗)、建坪面積、構造(木造・鉄骨造・鉄筋造)、地域など、シミュレーションのために必要な情報がいくつかあります。それらの情報を入力していくと推定費用が算出されるシステムです。
データベースに過去数万件の空き家解体費用のデータが蓄積されており、さらに精度の高いシミュレーション金額を算出するために試行錯誤を繰り返しています。
2024年1月に行った調査では、シミュレーションによる推定費用と実際の工事金額の誤差が1割以内の案件が52.1%、シミュレーションより実際の工事金額が安価だった案件が22.9%でした。
一括見積サイトからスタートして、はじめは苦労しました。徐々に形を整えて今のコンシェルジュサービスに変わっています。
実績をひとつでも多く作りたかったので、直談判で協力を依頼し、今ではこの仕組みが広く知られるようになりました。
2023年に上場を果たし、多くの解体業者さんから加入したいと言われるようになりました。
DXでユーザーと解体業者のためにできること
DXは解体業界にどのような影響があると思いますか?
かつては情報の不透明さが解体業界全体の問題でした。「解体の窓口」は第三者的な目線で情報を透明化しており、以前より費用が適正化されていると思います。
DXで効率化すべきところは効率化すべきですが、人の手が介在すべきところはリソースを割いて介在させています。生の声を聞くために全国の業者さんに会いに行くこともあります。
解体業者は、ネットを活用して集客や効率化ができている会社と、高齢化や人手不足に苦しむ会社に二極化しているようです。前者にはビジネスチャンスをどんどん提供し、後者にはDXで仕事ができる環境を提供していきたいと思います。
解体は一生に一度あるかないかのことです。不安を抱えているユーザーのために何を提供していますか?
はじめは、ユーザーさんと解体業者さんをマッチングしたら日本の空き家問題は解決すると思っていました。しかし相続でもめていたり、売却相手が見つからなかったり、いろいろな問題を解決していかなくてはなりません。
全国に不動産会社さんや司法書士さんなど、解体業者さん以外のパートナーがたくさんいます。またコンシェルジュはユーザーさんの背景まで理解して、解体以外の選択肢を取れるようにしています。
解体がすべてではありません。解体せずにほかの選択肢が取れる場合はそのほうがいいと案内できることが大事だと思います。
「住」に関するあらゆる悩みを解決できるプラットフォームへ
空き家で一番問題なのは、解体したくてもできないことではないでしょうか?
空き家問題は究極の3択です。自分が住むか、誰かが活用するか、更地にして次の選択肢を考えるか、この3つです。更地にして次の選択肢を考えるというのは最後の選択肢です。
最後の選択肢である解体を選ばざるを得ない場合も増えています。解体にいくらかかるのか、ある程度わかっていたら自分で住んだり誰かが活用したりという選択肢についても検討しやすくなります。
300万円で解体できると聞いていたのに実際には500万円かかるとしたら話は進みません。解体費用の精度をさらに上げていくのが今後の使命だと思います。
御社の今後の展望などはありますか?
空き家について、地元の役所の相談窓口に相談される方もいらっしゃいます。
弊社は新しい技術はあるものの知名度が低く、役所は信用度が高いもののあまり融通がきかない部分があります。官民が連携して強みと弱みを補いあい、これまでにない新しい空き家対策を行っていく必要があると思います。
解体だけでなく、相続や売却など多様化するニーズに応えられる引き出しを用意しておくことが大事です。名前は「解体の窓口」ですが、将来的には衣食住の「住」に関するあらゆる悩みを解決できるプラットフォームに進化させていきます。
key point
- 「解体の窓口」は、ユーザーと解体業者の間にコンシェルジュが介在して対応するので、ユーザーと解体業者がやりとりする必要がない。
- 物件の情報を入力するとAI解体費用シミュレータで相場がわかり、逆オークションで最安値がわかるので、ユーザーは最適な解体業者を選べる。
- 「解体の窓口」は2020年7月のサービス提供開始以来、これまでに1700社を超える解体業者が加盟し、22,000人のユーザーが利用している。
いかがでしたでしょうか。
2023年12月、「空家対策特別措置法」が改正されました。
老朽化で倒壊の危険性があるなど一定の要件を満たす「特定空家」のほかに、管理が十分されておらず放置すれば特定空家になる恐れのある「管理不全空家」というカテゴリーができました。
「特定空家」だけでなく「管理不全空家」も、自治体の勧告に従わず放置していると住宅用地の特例が適用されず、固定資産税が最大6倍になる可能性があります。
活用するのか、解体するのか、具体的に考え始める一歩として、解体の費用の見積もりを取ってみてはいかがでしょうか。
解体の窓口
https://kaitai-mado.jp/
バリュークリエーション株式会社
https://value-creation.jp/
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TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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