ゴルフ場のDXを実現するクラウド型基幹システム「Round Master」
コロナ禍でスポーツ業界は大きな打撃を受けましたが、ゴルフ業界では新たにゴルフを始める若年層や女性が増加しました。
経済産業省の調査によれば、2022年のゴルフ場の売り上げは、1,000億円台まで回復し、前年比8.5%増、利用者数は前年比2.5%増の1,051万人を記録しています。
その背景には、屋外で「密」を避けやすいというだけではなく「スマートフォン」を活用した予約システムやAI活用などゴルフ場のDX化の推進があります。
三和コンピュータ株式会社は、1975年にゴルフ場システムの開発・販売をスタートし、延べ600箇所のシステムを導入し、業界のDX化を牽引してきました。
今回は、三和コンピュータ株式会社の矢野氏・鈴木氏より、2023年11月にリリースされた「Round Master」の最先端ソリューション、ゴルフ場のDX化における課題と将来の展望についてお話をお伺いしています。
コンピュータ黎明期から培ったテクノロジーで課題解決を目指す
会社の事業内容を教えていただけますでしょうか?
三和コンピュータ株式会社は、1971年の設立以来ソフトウェア設計や開発、ITインフラの環境整備、保守サービスなどコンピュータ周辺事業を推進してきました。
コンピュータ黎明期から培ってきた技術をもとに、ゴルフ場をはじめとして、ホテル、年金基金、顔認証システムを用いたフィジカルセキュリティなどさまざまな分野でソリューションを提供しています。
御社の事業のひとつであるゴルフ場システムはどのようなサービスですか?
弊社は、ゴルフ場の運営に欠かせない機能を搭載した「オフコン版ゴルフ場基幹システム」を1975年にリリースしました。
その後、約50年にわたってゴルフ業界に携わってきた実績と技術を生かして全国にシステムを導入しています。
ゴルフ場ビジネスを総合的な視点でとらえ、求められる課題をテクノロジーを駆使して解決しています。
業務の省力化と新しいユーザー体験を提供する「Round Master」
11月にリリースした「Round Master」について教えていただけますでしょうか?
今回のシステム「Round Master」は、クラウド型サービスとして、ゴルファーも含めた利便性の向上と運営コストの削減を目的に開発しました。
「Round Master」の前身で1997年にWindows版としてリリースされた「Approach」はクライアントサーバ型ですが、今回はクラウド型のサービスになります。
基本的な機能はApproachを継承していますが、ゴルフ場運営における入力作業を簡略化し、レストランではスマートフォンを活用したセルフオーダー機能を充実させ効率化を実現しました。
また、業界に先駆けて予約から決済までの流れをスマートフォンで完結させる「イージーフロント機能」によって、フロント業務の省力化とゴルファーへの新しいユーザー体験を提供しています。
大規模災害など回線障害が発生した場合の対応は可能ですか?
「Round Master」は、お客様の情報をクラウド上で管理しています。
標準でバックアップ機能も搭載しているので、自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合でもデータを守ることができます。
さらに、基幹システムをクラウド型にすることで、システムの入れ替えに伴うメンテナンスコストやシステム改修コストも抑えることができます。
ゴルフ場は芝が命。業界のDX化に対する優位性は低い?
「Round Master」はゴルフ場のDX化に寄与しているのですね。ゴルフ業界のDX化は進んでいるのでしょうか?
芝はゴルフ場の価値そのものですので、コースメンテナンスには多くの人員と費用が割かれています。そのため設備投資の優先度は芝のメンテナンスに関するものが優先されますが、近年はICTやDX化への関心も高まり積極的に投資をするゴルフ場も多くなっています。
敷居の高さを払拭して若い方にゴルフの楽しさを伝えたい
ゴルフは費用や装備の面から若者には敷居が高いイメージがありますが実際にはどうですか?
ゴルフ場といえば「会員権」や「メンバーシップ」といった言葉が連想され、若い方たちには少々敷居が高いイメージがありますが、最近はメンバーとビジターの区別なくプレーできるゴルフ場がほとんどです。
ゴルフ場ではマナーが尊重されますので、ドレスコードの順守が求められていましたが、最近は着替えなしで直接プレーできるゴルフ場も増えてきました。
若い方を増やすためにゴルフ業界ではどのような取組みをされているのでしょうか?
昔は、職場の上司からクラブを譲り受けてゴルフを始め、社内コンペで親睦を深めるケースも多かったのではないでしょうか。
最近は「お一人様予約」という予約スタイルが定着し初対面の方と4人でプレーするサービスがあり若い方から人気を集めています。
AIで分析したデータ活用でスタッフの負担を軽減
今後のゴルフ業界についてどのようにお考えですか?
ゴルフは、密にならず屋外で楽しめるため、コロナ禍で入場者数が1.5倍増というデータもあるように、新たにゴルフを始める方が多いように感じます。
スマートフォンひとつで手軽に予約できるシステムやレストランのメニューや宿泊施設を充実させることで、世代を超えて多くの方にゴルフ場に来ていただけるのではないでしょうか。
今後の御社の展望について教えていただけますか?
Round Masterに蓄積された情報を二次、三次利用することで、ゴルフ場の価値向上に貢献したいです。
お客様の来場回数、年齢層、お住まいの地域などのデータをAIで分析し、お勧めのプランを提案することで、少しでもスタッフの負担を軽減できればと考えています。
将来的には、芝のメンテナンスと作業実績を地図情報と連携し、熟練従業員の経験やスキルを未来へ引き継ぎ、短期間で後継者を育成できるシステムを構築して参ります。
これからも「Round Master」を通じてゴルフ業界全体の人手不足を解消し、DX化を推進していきたいと思います。
終わりに
key point
- 三和コンピュータ株式会社は、1971年の設立以来ソフトウェア設計や開発、ハードウェア据付・ITインフラの環境整備、保守サービスなどコンピュータ周辺事業を推進している。
- 約50年にわたってゴルフ業界に携わってきた実績と技術を生かしてゴルフ場ビジネスで求められる課題をテクノロジーで解決している。
- ゴルフ場基幹システムである「Round Master」は、利便性の向上と運営コストの削減を目的に開発されたクラウド型サービスである。
- ゴルフ業界全体としても近年はICTやDX化への関心も高まり活発になっている。
- コロナ禍が追風となり、密にならない屋外レジャーであるゴルフ業界全体の売上は伸びている。
- 今後、若い世代をいかに取り込むかが課題であり、スマートフォンを用いたシステム簡略化や従業員の負担軽減などDX化の推進は必須である。
いかがでしたでしょうか?
IMDの世界競争力センターによる国ごとの競争力を示した2023年版「世界デジタル競争力ランキングによれば、日本は32位で過去最低を記録しました。
2021年には「デジタル庁」が開設され官民一体となったDX化に着手する動きが加速していますが世界的には遅れている状況です。
特にデータの扱い方や活用については、日本は全64ヶ国中63位という結果が出ており、スキル習得に向けた取り組みが急務となっています。
ゴルフ業界のように人の労働が基本の「労働集約型ビジネス」に該当する飲食や医療などDX化が遅れると言われている業界は「Round Master」のようなシステムの導入を検討されてはいかがでしょうでしょうか。
関連記事
- データとAIを活用し食の課題を解決する。オイシックス・ラ・大地の専門組織DMOとは
- 最先端技術「XR」を駆使して幸せなソリューションを届ける
- 採用が「労働集約産業」だった時代は終わった。対話型AI面接サービスSHaiNの挑戦
- 持続可能な世界を創造する。「セルフ量り売り」のパイオニアが切り開く未来とは
- 実現したいのは「ドラえもん」のようなロボットが一家に一台ある世界
- 目指しているのは「不動産業界のインフラ」イタンジ株式会社が創造する未来とは
- 「あらゆる人に機会を」日本最大級のスキルマーケット「ココナラ」が目指す世界とは
- 聞こえ難い音をクリアに解放。ドイツ企業「Mimi」が提唱する音のパーソナライズ化とは
PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
この記事を気にいったらいいね!しよう
PreBellの最新の話題をお届けします。