ゲーム人口の増加でゲーミング空間が生まれ間取りも変わる
家庭用ゲーム機「ファミコン」が誕生して40年が経過しました。
幼児からシニアまで日本のゲーム人口は5400万人といわれ、今やゲームは暮らしの中にすっかり浸透しています。
このような状況のなかで、ルームクリップ株式会社は、住まいと暮らしの今と未来について研究・分析するRoomClip住文化研究所から「増加するゲーム人口と、整えられていく住まいのゲーミング空間」と題する調査レポートを発表しました。
今回は、ルームクリップ株式会社の執行役員CBO川本太郎様と当寺ヶ盛佳奈様より、調査レポート「増加するゲーム人口と、整えられていく住まいのゲーミング空間」についてお伺いしています。
ルームクリップ株式会社は、住生活の領域に特化した日本最大級のソーシャルプラットフォーム「RoomClip」の企画・開発・運営を行っています。
「RoomClip」は、家具・家電・雑貨などインテリアの写真を投稿・閲覧するサイトで、月間ユーザーは600万人、投稿写真は600万枚以上です。写真を模様替えや収納の参考にしたり、気に入ったアイテムを購入したりできます。
RoomClip住文化研究所では、「RoomClip」の投稿写真や検索データを基に住まいと暮らしに関する調査や研究を行っており、このたび「ゲーミング空間」についてのレポートを発表しました。
調査や分析はどのような手法で行われるのでしょうか?
「RoomClip」に投稿されるインテリアの写真が累計600万枚以上あり、それぞれにタグがついており、その部屋のこだわりについてのコメントが書かれています。
基になるのは「RoomClip」の膨大なデータやSNSでの検索などの行動データ、総務省統計局などの統計情報です。これらを基にユーザーのトレンドや消費性向について調査・分析を進めます。
社会構造の大きな変化は人々の暮らしに変化をもたらします。それに伴う住まいの変化を見つめていきます。
「ファミリーリビング型」「ゲーマーカップル型」などゲーミング空間を5つに分類
調査レポート「増加するゲーム人口と、整えられていく住まいのゲーミング空間」の内容を教えていただけますか?
総務省の「令和3年社会生活基本調査」によると、趣味・娯楽の中でゲームをする人の割合は42.9%。「RoomClip」での、ゲームというキーワードを含む検索水準は2020年と比べて1.62倍となっており、ゲーム人口が増えていることがわかります。
ゲームにまつわる投稿を分析したところ、住まいでのゲーミング空間を5つに分類することができました。
「ファミリーリビング型」「フリーアドレス型」「没入空間型」「多目的コーナー型」「ゲーマーカップル型」の5つです。
5つのゲーミング空間とはどのようなものなのでしょうか?
1つ目はリビングのテレビ前で家族と一緒に楽しむ「ファミリーリビング型」。「宅トレ」や体を動かすタイプのゲームをするためにテレビの前をオープンスペースにするのはその派生型です。
2つ目は携帯タイプのゲーム機やスマホのアプリゲームを思い思いの場所で楽しむ「フリーアドレス型」。
3つ目は、PC、モニター、チェア、配信用のカメラなどの機器を整え、照明などでゲームの世界観を演出する「没入空間型」です。
4つ目はゲームを楽しむ空間でありながら、寝室、仕事部屋、子ども部屋などゲーム以外の用途にも使用される「多目的コーナー型」です。
5つ目は一つの部屋に複数のゲーミング環境を並べる「ゲーマーカップル型」。同棲カップルやDINKSの住宅で見られます。
ゲーミング空間が多様化した背景には何があるのでしょうか?
もとは家庭用ゲーム機で遊ぶライト層とPCで長時間プレイするコア層がいましたが、2010年代にゲームのマルチプラットフォーム化が進み、ライト層とコア層が同じゲームを楽しめるようになりました。
また、10代〜30代ではゲーム実況の動画に人気があります。ライト層だった若年層がうまいコア層に憧れたり、一緒に対戦したりするようになり、「多目的コーナー型」が生まれました。
女性のゲーマーは増加しており、日本のゲーマーの46%は女性という調査結果もあります。ゲームが共通の趣味というカップルが増加し「ゲーマーカップル型」が誕生しました。
住宅設備メーカーさん、建具建材メーカーさん、家具・家電メーカーさん、日用品のメーカーさん、インテリア関係や木工店のような業種の方もいらっしゃいます。
ゲームのような特定の領域だとゲーム専門のメーカーさんが見てくれますし、インテリアメーカーさんがゲーミング空間の家具を作ったり、住宅設備メーカーさんが防音機能や電源の数を増やすことを検討されるなど、周辺領域でいろいろな業種の方が見てくださります。
ゲーム人口の増加によって、ゲームのための空間を構築するだけでなく、家の間取りづくりにも変化が起きています。さまざまなメーカーさんに広く生活の最新ニーズを拾っていただき、ビジネスに活用していただきたいです。
社会が変わると暮らしが変わり住まいも変わる
他にはどんなテーマのレポートがありますか?
2017年頃から投稿が急増した「洗濯」に関する調査があります。洗濯は洗面脱衣所で洗い、外に干し、リビングで畳んで、各部屋のクローゼットにしまいます。
共働き世帯が増えてみんなが時短を考え、部屋干しという動きが出ました。洗剤など、部屋干し用の商品が増えています。しかし間取りは部屋干し前提ではないので、リビングに干したり狭い脱衣所に干したりしていました。
干す・畳む・しまうをすべて一部屋にまとめたのがランドリールームです。今はまだこだわりのある人が注文住宅でつくるものですが、いずれはオープンクローゼットのように集合住宅や建売住宅にも取り入れられるでしょう。
「RoomClip」にはシニア世代からの投稿もありますか?
2010年代、国内ではじめてSNSを利用した世代が今40〜50代になり、親の介護や自分の老後を考えはじめています。これまでSNSに介護の話題はありませんでしたが、アクティブユーザーたちが「シニアと暮らし」を発信しはじめました。
親の介護のために手すりなどを備えたものの、介護の機能はあってもデザインに不満があるので、カスタムメイドやDIYで乗り越えようという段階です。徐々に商品化されるという流れの入口だと思います。
これまでSNSは、インスタ映えという言葉どおり生活の映える部分だけ投稿されていましたが、すてきなインテリアだけでなく、収納がうまくいかない、この手を使うと簡単に収納できる、という情報交換もされています。
ユーザーのニーズをキャッチアップして企業へ
「RoomClip」ではどのような投稿が多いのでしょうか?
投稿には2つの方向性があります。1つは好きなものに囲まれて生活したいなどプラスにしていく方向性、もう1つは暮らしの中で感じるストレスを改善したいという方向性です。
ストレスの原因は、既存の住まいで満たされていないニーズです。既存の住まいとは、専業主婦を前提とした世帯に最適化した住まいです。共働き世帯がこの住まいで生活すると、さまざまな時短テクニックを駆使したり、商品を買ったりしなくてはいけません。
これまで個人が見えないところで頑張っていたことが、SNSで顕在化するようになりました。時短テクニックを駆使しなくてもストレスなく普通に暮らせるように、ユーザーさんのニーズをキャッチアップしてさまざまな形で解決していきたいと思います。
御社の今後の展望などはありますか?
住まいのストックに対して新築やリフォームはごく一部にすぎません。住まいは急激に変わるわけではなく徐々に変わっていきます。
ゆるやかな変化もユーザーのニーズが大きいこともしっかりと捉えて、将来振り返ったときに令和の時代はこうだったという記録を残したいと思います。
ルームクリップ株式会社のビジョンは「人と人、人と企業が繋がる住生活の新しい産業と文化を築く」ことです。ユーザーさんから吸い上げたニーズを企業につないでいき、ユーザーさんの住環境をよりよくしていきます。
key point
- ゲーミング空間は「ファミリーリビング型」「フリーアドレス型」「没入空間型」「多目的コーナー型」「ゲーマーカップル型」の5つに分類できる。
- ゲーミング空間が多様化した背景には、ゲームのマルチプラットフォーム化、若年層でのゲーム実況動画人気、女性ゲーマーの増加などがある。
- ゲーム人口の増加によって、ゲームのための空間を構築するだけでなく、住まいづくりにも変化が起きている。
いかがでしたでしょうか。
「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉があります。
歌は世の中を反映し、世の中も歌の流行に影響されるという意味です。
暮らしの変化は少子高齢化や働き方改革、価値観の多様化など社会の変化を反映し、社会もまた人々のライフスタイルの変化に影響されて変わっていくのかもしれません。
近年、3D映像と音響効果によって仮想現実を体験できるVRゲームが注目されています。ゲーム機器の進化によって今後もゲーミング環境は変化していくことでしょう。
RoomClip
https://roomclip.jp/
ルームクリップ株式会社
https://corp.roomclip.jp/
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TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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