レコメンドエンジン「Rtoaster」はなぜ顧客に感動体験を提供できるのか
ECサイトで見つけたジャケットを購入したら、やたらと同じような商品ばかりおすすめされるようになった。
そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
レコメンドは本来、商品の販売促進や顧客満足度向上のために利用されるものですが、あまり効果的とは言えない場合もあるようです。
このような状況の中で、株式会社ブレインパッドは、一人ひとりに最適な顧客体験を提供するレコメンドエンジン搭載プロダクト「Rtoaster(アールトースター)」を提供しています。
今回は、株式会社ブレインパッドのXaaSユニット 副統括ディレクター木部 勝様、XaaSユニット プロダクトマネジメント リード シニアマネジャー嶋田 貴夫様より「Rtoaster」についてお話をお伺いしています。
レコメンドエンジン「Rtoaster」とは?
御社の業務内容について教えていただけますでしょうか?
株式会社ブレインパッドは2004年3月に設立されました。主な事業内容は、データ活用を通じて企業の経営改善を支援する次の2つのサービスです。1つ目は、専門人材が企業様に最適なデータ活用を設計して経営に実装する「プロフェッショナル・サービス」、2つ目は、誰もが使いこなせる実用的なプロダクト群であり、データ活用の日常化をサポートする「プロダクト・サービス」です。
自社開発プロダクトの一つである「Rtoaster」は、顧客の属性・行動・嗜好性などの顧客データを一元管理し、顧客とのコミュニケーションに活用することで、こだわりの接客をWebサイトやアプリ上で実現し、最適にパーソナライズされた顧客体験を提供します。
「Rtoaster」とはどのようなものなのでしょうか?
「Rtoaster」は、Webとアプリでレコメンドを最適化するプラットフォームをSaaS型で提供しています。例えばネットで弊社ブレインパッドの記事を閲覧した人は、同業他社の記事にも興味があるだろうとか、ウェブマーケティングに関する記事を好むだろうという傾向がわかっています。
閲覧した人に向けて「この記事を見た人はこういう記事も見ていますよ」とレコメンドします。加えて、会員情報などによって閲覧した人が50歳だとわかっていれば「50歳の人はこういう記事を見ていますよ」とレコメンドすることができますので、より細かいレコメンドが可能です
閲覧した人に最適な記事をレコメンドすると、そのサイトに長く滞在してもらうことができ、より多くの記事を閲覧してもらう事に貢献します。サイト回遊率や記事閲覧数などのKPI(重要業績評価指標)達成に効果があることから、アパレル、化粧品、メディア・動画配信、金融など多くの業界でご活用いただいています。
他社とは違う「Rtoaster」の強みとは?
「Rtoaster」はSaaS型で提供されるとのことですが、ユーザーは使いこなせるのでしょうか?
誰もが使いこなせる実用的なプロダクトを目指しており、多くのお客様はプロダクトだけを使用するお客様です。
しかし、企業様と対話しながら、企業の目的に応じて適切な機能を組み合わせて改善しつづけるのが理想的なやり方だと思います。
ブレインパッドはオンボーディングを行いながらレコメンドの施策案や他社の活用事例を紹介し、成果につながるようサポートしています。
他社のプロダクトとは違う「Rtoaster」の強みはありますか?
「Rtoaster」には多くの機能がありますが、代表的なのはポップアップレコメンド、ルールベースレコメンド、自動レコメンドの3つです。ポップアップレコメンドはサイトを見ているとポンッと出てくるメッセージです。ルールベースレコメンドは企業様が決めたルールに基づいてレコメンドします。新商品だけ上位に出すといったことも可能です。自動レコメンドは、アイテムごとに類似した商品を自動でレコメンドします。
これら3つの機能をワンツールでやっているのは弊社だけでしょう。これらを組み合わせてご利用いただくことにより、細かいターゲティング施策が可能になります。
顧客データの活用とは何か
的外れな営業メールが届くのはデータがうまく活用されていないせいでしょうか?
お客様とのコミュニケーションをどのようにしていこうか悩まれる方へは、フェイシング、タイミング、ターゲティング、マッチングをちょうど最後にGが付くので4Gと勝手に呼んでいますが、それらを軸に検討していきましょうとお伝えしています。
フェイシングは、お客様に対してメール、アプリ、電話など多くの接点がある中でどの接点でコミュニケーションをとるか、タイミングはお客様にコンタクトをとる時期や時間のことです。ターゲティングはどのお客様に紹介するのか、マッチングは企業が保有するクリエイティブの中で何を紹介するか、です。
また、データを保有している企業様は多くなりましたが、十分に活用できていない企業様が多いように感じます。
データの活用とはどのようなことなのでしょうか?
昔は、スポットでキャンペーンなどを実施して集まった顧客データが後で活用されることはありませんでした。最近、我々は顧客データの資産化を提唱しています。
キャンペーンを実施して売上が増えたら、増えてよかったで終わりではありません。なぜ増えたかデータを基に可視化して、それをもとに仮説を立てる、次の施策を検討する、というPDCAサイクルをグルグル回せるようにします。
どのような戦略や戦術を立てるかは企業様によってケースバイケースですが、我々にできることは、いかにデータを企業が活用していくかを支援するかだと思っています。
活用事例でみる「Rtoaster」のレコメンド
「Rtoaster」でデータ活用がうまくいった事例はありますか?
旅行を検討していて、例えば家計を考えると一泊1万5000円が上限だったり、子ども連れで泊まれることや温泉があることが条件だったりという場合があります。しかし、旅行サイトで宿を探すとき、条件とは関係なく、思わず高級リゾートの紹介記事を見てしまうことがあるのではないでしょうか。機械学習だと閲覧した情報をベースとするので、条件にあわない高額なプランをすすめてしまう、といった事が起きてしまいます。
しかし、「Rtoaster」は、ルールベースレコメンドと機械学習の組み合わせができるので、価格帯や温泉の有無など、ユーザーのこだわり条件を踏まえたレコメンドができます。
ほかにはどのような事例がありますか?
ドラッグストアは店舗での売り上げが圧倒的に多いのですが、最近はECでの販売を強化しようとしています。しかし、ECのデータだけでレコメンドすると、ECで購入したようなものしかアプリに出てきません。
ふだんプロテインはネットで購入するけれど、頭痛がしたときは実店舗で頭痛薬を買うということはありがちです。両方のデータを学習させるのが基本ですが、意外にできていません。
「Rtoaster」は、ECのデータだけでなく、オフラインの購買データも学習させてレコメンドしています。
データサイエンス×AIでデータ活用の普及を促進
「Rtoaster」のユーザーからはどのような声がありますか?
あるユーザー様は「ふつうのレコメンドはなんかAIくさいですよね。でも『Rtoaster』のレコメンドはAIくさくないんです」とおっしゃっていました。
旅行会社のマーケターの方は、は「どこに泊まろうかなというところから、いい宿が見つかった、予約できた、楽しみだな、とお客様の心がどんどんワクワクしていくようなプランをお客様の負担を最小限にして提示したい」と思っているそうです。
人のぬくもりが感じられるレコメンドをするためには、機械ではなく人間がルールを作らなくてはいけないのですが、ルール設定を細かくしすぎるのも問題です。それをいかに自動化するかというのが次のステージだと思っています。
御社の今後の展望などはありますか?
弊社の従業員約550人のうち200人超がデータサイエンティストです。「Rtoaster」のレコメンドエンジンは彼らが作ったアルゴリズムに基づくものなので、データサイエンスの機能は確実に備わっています。
「新製品の売上が10%上がるレコメンドをしてください」と日本語で命令したら、機械が自動でやってくれるといった理想を掲げながら開発しています。
データサイエンスの力にAIの力を掛け合わせて、これからもデータ活用の普及を促進することに尽力してまいります。
終わりに
KeyPoint
- 「Rtoaster」は、さまざまな顧客データを一元管理して活用することで、こだわりの接客をWebサイトやアプリ上で実現し、最適にパーソナライズされた顧客体験を提供する。
- 「Rtoaster」の強みはポップアップレコメンド、ルールベースレコメンド、アイテム軸レコメンドの3つをワンツールで扱えることである。
- 「Rtoaster」は、ルールベースレコメンドと機械学習の組み合わせができるので、ユーザーのこだわり条件をふまえたレコメンドができる。
いかがでしたでしょうか?
まったく興味のない広告が何度も表示されると、そのサイト自体がいやになってしまいます。
その一方で、プレゼント選びで何を選べばよいのかわからず途方に暮れながら検索しているときに、自分では思いもよらないような好適品がレコメンドされたら、そのサイトをまた使いたくなるでしょう。
セレクトショップで親切な店員さんにプレゼント選びを手伝ってもらい、気に入った商品を思いがけず発見したようなワクワク気分になれるかもしれません。
データサイエンスとAIの力で、自分でも気づいていない潜在的なニーズが掘り起こされてレコメンドされる日が遠からず訪れそうです。
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TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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