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高品質・低コストな3Dモデルを生成する「3D Gaussian Splatting」とは

衣服を購入するときは店で実物を見て決めていたけれど、コロナ禍以降、もっぱらネット通販で購入するようになったという方が増えています。

経済産業省の「令和4年度デジタル取引環境整備事業」によると、2022年のアパレルEC市場規模は2兆5,499億円、EC化率は21.56%。2015年のEC化率は9.04%ですから、EC化率が急速に高まっていると言えるでしょう。

しかし、いざ商品が届いてみると、ネットの画像を見て想像していたのとイメージが異なり、がっかりしたという経験がある人も多いのではないでしょうか。

このような状況のなかで、テックファーム株式会社は最先端技術「3D Gaussian Splatting(ガウシアンスプラッティング)」を採用した3Dモデル生成ソリューションサービスの提供を開始したと発表しました。

今回は、テックファーム株式会社の開発本部2 本部長 渡辺夏樹様、開発本部2 コマース&ロジスティクス部 部長 大和義博様、開発本部2 コマース&ロジスティクス部 第4グループ マネジャー 松本涼様より「3D Gaussian Splatting」についてお話をお伺いしています。

3Dコンテンツを生成する最新技術「3D Gaussian Splatting」

3Dコンテンツを生成する最新技術「3D Gaussian Splatting」

御社の業務内容について教えていただけますでしょうか?

テックファーム株式会社は、独立系システムベンダーとして1998年に創業し、デジタル技術を活用した事業変革や課題解決のためのソリューションをワンストップで提供しています。

世界初のモバイルインターネットサービスであるNTTドコモ「iモード」立ち上げ時からシステム開発に参画するなど、モバイル黎明期から多種多様な産業におけるICT活用の経験やノウハウを蓄積してきました。

3Dコンテンツ生成技術においては、2020年にフォトグラメトリ技術を用いて商品などを3Dモデル化し、ECサイトで活用できるサービスをスタート。今回、最新技術である「3D Gaussian Splatting」の早期実用化を実現しました。

「3D Gaussian Splatting」とはどのようなものなのでしょうか?

「3D Gaussian Splatting」はAIを活用した最新の3D技術です。複数のアングルから撮影した画像データから3D空間を学習し、生成された3D空間が高速レンダリング可能な技術です。

従来のフォトグラメトリの技術では再現が難しかった人物の表情や髪の毛、衣服の素材感や透け感など細部までリアルに再現できるのが特長です。撮影時間やデータ容量はこれまでより大幅に縮小しました。

今回、アパレルECサイトでの提供を開始しましたが、アパレル業界以外にもエンターテインメント業界、ペット業界など幅広いジャンルでの利用が見込まれます。

クオリティを保ちながら従来技術より安く早く軽く3Dモデルを生成する「3D Gaussian Splatting」

クオリティを保ちながら従来技術より安く早く軽く3Dモデルを生成する「3D Gaussian Splatting」

開発のきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

アパレルのECサイトにジャケットなど商品のサムネイルがありますが、「3Dデータとして見せることができたら面白いのでは?」というのが最初の発想でした。

「フォトグラメトリ」という技術を使ってスニーカーを撮影し、3Dモデル化するところからスタートしました。ECサイト上で、ユーザーは360度自由な視点で商品を閲覧できます。

この技術の次を考えたときに、衣類単体ではなく、モデルに着用してもらいトータルコーディネートした状態を再現できたら、ユーザーが商品に対するイメージを膨らませやすいのではないかと考えました。

「3D Gaussian Splatting」と「フォトグラメトリ」はどのように違うのでしょうか?

被写体が完全停止できない人物や動物の撮影においては、あらゆるアングルから一括同時に撮影する必要があります。

これまで当社が「フォトグラメトリ」において採用していた撮影方式では、200枚~500枚の撮影枚数が必要で、難易度・コスト共に高く、撮影時間も1~3時間程度かかっていました。 

そこで、「3D Gaussian Splatting」においては、50台程度のカメラで一括撮影する方式とすることで、撮影時間は数秒から数分程度。撮影の難易度も低いので、大幅な時間短縮と業務の効率化を実現できました。

「フォトグラメトリ」はデータ容量が重く、データ圧縮などの加工が必要でしたが、「3D Gaussian Splatting」はデータ容量が軽く、ブラウザでの表示に適しています。生成された3Dモデルのクオリティと撮影にかかるコストバランスがちょうどいいのがメリットです。

アパレルECサイトでトータルコーディネートを3Dで細部まで再現

「3D Gaussian Splatting」で3Dモデルを生成するとアパレルではどのようなメリットがあるのでしょうか?

「フォトグラメトリ」では容量が重くて実現できなかった「ECサイト上で、人間が商品を着用した状態をトータルコーディネートで見せたい」というお客様のご要望に応えることができました。

「3D Gaussian Splatting」は、人間の表情や髪の毛、ブラウスの透け感やプリーツをリアルに再現しています。

3Dモデルをドラッグで回転させると360度いろいろな視点から見ることができ、ホイール操作で拡大したり縮小したりできるので、リアルな着用感を知ることができます。

売上にも影響はあるのでしょうか?

ユーザーがイメージを膨らませることによって購買促進につなげることや返品率の削減が期待できます。

フォトグラメトリでの3Dモデルについては返品率の統計データがありますが、3D学習を使った事例のデータはまだなくて、どういう効果を得られるかはこれからの研究課題です。

フォトグラメトリによる3Dモデルに近い効果が得られるだろうと思っています。

ペット業界、エンターテインメント業界でも利用が見込まれる3D技術

ペット業界、エンターテインメント業界でも利用が見込まれる3D技術

アパレル以外にはどのようなジャンルでの利用が期待できそうですか?

ペット業界では、例えば「レインコートを着用した柴犬」の360度3Dコンテンツ化が可能です。リアルさに加え、コンテンツそのものの可愛さが、購買意欲を喚起することが期待できます。

ペットに限らず、お子さんや家族が成長していく過程を時系列のデータで貯めておくことが有用です。グラス型デバイスなどが普及してきたときに、自分の手元でそのコンテンツを見られるようになるでしょう。

写真館で家族の写真を撮る時があると思います。それを3Dデータとして撮り、スマホで360度いろいろな視点から見たり、データをアクリルスタンドにして祖父母にプレセントしたりといった活用法も考えられます。

エンターテインメント業界ではどのように活用できますか?

アーティストのコンサートをデータ化して、それをライブに来てくれた人たちに限定データとしてお渡しして、アプリで見られるようにするという使い方が考えられます。

人だけでなく施設など広い範囲の3Dモデルを作ることもできるので、テーマパークの3DマップやVR体験のデータとしても利用可能です。

ミュージアムやホテルなど施設自体をアピールしたい場合に、これまでは360度カメラで撮影してポイントポイントで見せていたものを、ポイントとポイントの間もすべて見られる状態を作れるのではないかと思い、試作を進めています。

3DモデルはEC領域での可能性を秘めている

EC領域で3Dは注目されているのでしょうか?

3Dがトレンドになる可能性は感じています。なぜならAmazonやShopifyがやりはじめているからです。

Amazonは自社の倉庫で撮影したものを3Dデータ化して、ECサイト上でサムネイルを見せるようにしています。

これらの企業が3Dをはじめたということは、何かしらの裏付けがあってうまくいっている可能性があるので、3Dの流れはきている気がします。

御社の今後の展望などはありますか?

我々はいろいろなお客様とおつきあいしているので、ECに特化しているわけではありません。昨今、EC領域にも注力し、実績を増やしてきました。さらなる強みとなる武器として3Dや3DGSの提供をしていきます。

お客様に3Dの使い方や見せ方を提供し、お客様からそのフィードバックをいただきながら、経験を蓄積していきます。

今後もテックファームは、様々な分野で拡大する3Dモデルの活用を支援します。

終わりに

「3D Gaussian Splatting」は、複数のアングルから撮影した画像データから3D空間を学習し、リアルタイムでレンダリングして3Dモデルを生成する技術

key point

  • 「3D Gaussian Splatting」は、複数のアングルから撮影した画像データから3D空間を学習し、リアルタイムでレンダリングして3Dモデルを生成する技術である。
  • 「3D Gaussian Splatting」は、人間の表情や髪の毛、ブラウスの透け感やプリーツをリアルに再現する。
  • 「3D Gaussian Splatting」は、従来の技術フォトグラメトリより撮影時間やデータ容量を大幅に削減し、業務の効率化を実現した。

いかがでしたでしょうか。

通販サイトには、商品サイズはもちろん、生地の素材などの情報も記載されています。しかし、返品するほどではないが、自分が欲しかったモノとは少し違っていたということはあるでしょう。

トータルコーディネートされた3D モデルを360度ぐるりと回して後ろ姿を確認したり、斜め上から眺めたり、斜め下から見上げたり、いろいろなアングルで見ることによって実物の衣服のイメージがとてもつかみやすくなります。

3Dモデルによるリアルな再現で返品率が減少すれば、企業と消費者双方にWin-Winと言えるのではないでしょうか。

もし通販サイトで3Dモデルを見つけたら、ドラッグで回転させたり、ホイールで拡大や縮小したり、といった操作を試してみてはいかがでしょうか。

テックファーム株式会社
https://www.techfirm.co.jp/

TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock

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