米弁護士、ChatGPTで実在しない判例引用
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2023.06.17 米弁護士、ChatGPTで実在しない判例引用

米ニューヨーク州の弁護士が、民事訴訟の資料を対話型AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を用いて作成したところ、実在しない裁判例を引用してしまったことが波紋を呼んでいる。この出来事は、米ニューヨーク・タイムズなどによって報じられた。

問題となった訴訟は、2019年にニューヨーク行きの飛行機内で配膳カートに衝突して怪我をした男性客が、南米コロンビアのアビアンカ航空を相手に起こしたものだ。男性客の弁護士であるピーター・ロデュカ氏は訴訟の正当性を証明するため、過去の判例を引用した資料を提出した。

しかし、ニューヨーク州連邦裁判所は資料で言及されている判例のいくつかが実在しないことに気づいた。同裁判所のカステル裁判官は「提出された訴訟のうち6件は、偽の引用や偽の内部引用を伴う偽の司法判断のようだ」と示した。

弁護士に釈明を求めたところ、ロデュカ氏と同じ法律事務所に勤務する弁護士のスティーブン・シュワルツ氏がChatGPTを用いて作成したことが判明した。ロデュカ氏は資料作成に関与していないとしている。

シュワルツ氏はChatGPTを利用したことを「非常に後悔している」と供述。これまで法律調査に利用したことがなく、「内容が虚偽である可能性があるとは知らなかった」という。今後は信頼性の検証なしに利用しないと述べた。

裁判所は両氏を懲戒処分にするかどうかの審理を6月8日に開く。場合によっては弁護士資格の剥奪に繋がる可能性もあるという。

生成AIは便利な一方で問題も

ChatGPTは米新興のオープンAIが開発した生成AI。質問に対して、自然な文章で答えることができる。簡単な指示を入力すれば、文章やプログラミングを作成することも可能だ。

一方、個人情報や著作権保護、情報の信憑性の観点からは問題が指摘されている。国内でも企業や自治体への導入が進むが、議事録の要約や外国語の翻訳など機密情報を伴わない分野のみに活用するなど、利用範囲は限定的だ。

【関連リンク】

・ChatGPT cited ‘bogus’ cases for a New York federal court filing. The attorneys involved may face sanctions.(CNBC)
https://www.cnbc.com/2023/05/30/chatgpt-cited-bogus-cases-for-a-new-york-federal-court-filing.html

TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock

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