アジャイル開発でインボイス制度相談受付窓口の予約受付システムを2カ月弱で構築
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2024.04.18 アジャイル開発でインボイス制度相談受付窓口の予約受付システムを2カ月弱で構築

2023年10月、インボイス制度が開始し、課税事業者だけでなく免税事業者も対応が必要になりました。

課税事業者への転換を迫られた免税事業者や、どのように手続きを進めればいいのか悩んでいる事業者の方も多いのではないでしょうか。 

このような状況の中で、株式会社トランスコスモス・デジタル・テクノロジーは、親会社トランスコスモス株式会社が設置したインボイス制度相談受付窓口の「相談予約受付システム」を開発しました。 

今回は、株式会社トランスコスモス・デジタル・テクノロジーの藤川様、太田様、小尾様より「相談予約受付システム」の開発プロジェクトについてお話をお伺いしています。

わずか2カ月弱でインボイス制度「相談予約受付システム」を開発

わずか2カ月弱でインボイス制度「相談予約受付システム」を開発

御社の業務内容について教えていただけますでしょうか?

(藤川)株式会社トランスコスモス・デジタル・テクノロジーは、トランスコスモス株式会社のデジタルテクノロジーに関する戦略子会社です。

情報システムの開発・運用・販売とコンサルテーション、ハードウェア・ソフトウェアの複合システム設計と構築、ソフトウェアの開発・運用・販売、企業のDX化推進のサポート等を行っています。

中小企業庁様の令和4年度事業環境変化対応型支援事業費補助金(相談窓口設置運営事業)で、親会社であるトランスコスモス株式会社が補助事業者として採択され、「中小企業・小規模事業者インボイス制度受付窓口」を設置しました。弊社は「相談予約受付システム」を開発いたしました。

「インボイス相談受付窓口」と「相談予約受付システム」について簡単にご説明いただけますでしょうか。

(藤川)「インボイス相談受付窓口」は中小企業を対象に、コールセンターで相談内容に応じた各種窓口を案内し、事業者が税理士へオンラインで相談可能にすることにより、インボイス制度についてのアドバイスや困りごとを解消することが目的です。

「相談予約受付システム」は、事業者が簡単に面談を予約して、確実に税理士とオンライン面談を行うための仕組みです。

2カ月弱の工期で、コールセンターと相談窓口をトータルで管理するシステムを構築する必要があったため、アジャイル開発を採用しました。セキュリティについてはISMAPに準拠したものが必要だったため、マイクロソフト社のPower Platformを活用して開発しました。

ローコードプラットフォームで工期を短縮

ローコードプラットフォームで工期を短縮

今回のシステム構築はどのようなプロセスで進んだのでしょうか。

(太田)親会社のトランスコスモス株式会社が中小企業庁様から一括で受注していたので、グループ会社の中で要件をすり合わせしながら開発を進めました。

スケジュールが短かったので、システム側のメンバーが主導して要件を詰めていきました。

まず、全体の相談を管理するためのテーブル構成を検討し、事業者が希望する日時に相談可能な税理士の有無を確認、相談可能なら相談会の実施を受け皿となるテーブルにレコード追加し、事業者と税理士双方にメールで連絡するシステムを構築しました。

今回、クラウドサービスのAzureとPower Platformを使ったと伺いましたが、使い勝手はいかがでしたか?

(小尾)AzureとPower Platformは両方ともマイクロソフト社が提供しています。

今回はスケジュールが短かったのですが、限られた時間で作ることができました。アプリケーションの部分は何とも言えませんが、インフラ構築でいえば、もしAzureを使わなかったら工数は1.5〜2倍に増えていたと思います。

同じマイクロソフト社提供のサービス同士であれば開発しやすく、その後のメンテナンスも容易だと思います。

アジャイル開発のメリットデメリット

アジャイル開発のメリットデメリット

今回アジャイル開発の手法を取られたそうですが、いかがでしたか?

(太田)アジャイル開発は、何度も打ち合わせを行い、短いサイクルで反復しながら開発します。スケジュールが短かったので、そのスピード感に苦労しました。

今までスクラッチ開発に従事してきた者にとってはローコードプラットフォームでの開発は、作りたいものに対してできるできないの判断がしやすく、アジャイル開発はやりやすいと思います。

ただ、できるできないを判断する過程で、お客様が使用しない機能まで開発してしまうということもありました。

アジャイル開発のメリットデメリットはありましたか?

(小尾)細かい失敗がすぐ見つかるのはデメリットと思っていたのですが、従来のウォーターフォール開発ならある程度、形が出来上がったところまで進まないと気がつかないようなことが、致命傷になる前に気がついて早期に対応することができました。 

ただ、どこまで開発するか明確に定まっていないままスタートすると、いいものにしようという気持ちだけで際限なく進みそうになり、やらなくていいところまで手を出してしまいます。いろいろな意見を調整する必要があり、プロジェクトの管理者は非常に苦労しました。 

今回のように、小さい規模で早く良いものを作るのであればアジャイル開発がよいと思いますが、大きな組織でいくつかの部門が連携するようなものはアジャイル開発では限界があると思います。

企業のニーズをつかんでデジタルコンサルティングサービスを提供

お客様は、作りたいものがはっきりして要件が決まった状態で依頼するのでしょうか?

(小尾)個人的な感覚で申し上げると、依頼の8割くらいはお客様側であっても作りたいものがどうあるべきかは明確になっていないと思います。最初の段階で要件を全部出すことができるのはあまりなくて、進めていくうちに変更せざるを得ません。

要件定義など細部を詰めてから一気に進めるウォーターフォール開発より、小さいサイクルを繰り返すアジャイル開発のほうが、お客様にとっても我々にとってもメリットがあると思います。 

ローコードのPower Platformなら、できあがったものを確認して改善していくサイクルを作りやすいので、アジャイル開発に最適だと思います。

中小企業のDX化について、どのような提案をしたいですか?

(藤川)経営層はDXを目指したいのに、現場の作業者は紙ベースがいい、若手はDX化したいと思っても上司は今のままがいいなど、企業の中でも温度差があり、営業をかけても案件が進まないことがあります。また、中小企業は大企業と比べてDXにかけるコストが限られるのが実情です。

お客様がある程度固まった構想を持って相談されるとき、そのままだとかなり高額になる場合があります。その課題に対して、別のやり方をすればコストをかけずにできますという提案を心がけています。 

弊社はデジタルコンサルティングサービスを掲げていますので、DXがもたらす企業価値を提案していきたいと思います。

テクノロジーを強みとして企業のDX化をサポート

世の中のDX化についてどのように思われますか?

(藤川)企業の規模、業種などによってDXの進み具合はマチマチです。しかし、生成AIが登場したことにより、企業にとってAI活用はもう避けられないところまできていると思います。 

企業に導入するなら使う場面を限定するなどガバナンス・ルール作りが必要であり、それまでのルールや考え方を変更しなくてはならず、導入には時間がかかります。 

AIをどう活用するかによって企業の生産性は大きく変わると思います。活用するかしないかで、企業のバリューやもっと言えば個人のバリューに大きな格差が生まれるでしょう。どの企業にとってもAIはチャンスであり、ここを乗り越えることが重要です。

御社の今後の展望などはありますか?

(藤川)弊社は技術の会社なので、技術のベースを高めていきながら、それを使ってお客様にどのような価値を提案ができるかを考えています。 

DXが進んでいない企業やDXを始めたいけれど資金がないという企業に対して、何か共通のSaaSプラットフォームを用意し、AIに企業独自のものを学習させて、他社との差別化することなどをやっていきたいと考えています。

親会社のトランスコスモスの武器となることを踏まえたうえで、テクノロジー企業としての弊社の強みを出していくというのが今後のビジョンです。

終わりに

株式会社トランスコスモス・デジタル・テクノロジー

key point

  • 株式会社トランスコスモス・デジタル・テクノロジーは、親会社トランスコスモス株式会社が設置したインボイス制度相談受付窓口の「相談予約受付システム」を開発した。
  • 「相談予約受付システム」は、事業者が簡単に面談を予約して、確実に税理士とオンライン面談できるシステムである。
  • 工期が短かったので、設計・実装・テストを小さいサイクルで繰り返すアジャイル開発で構築した。
  • マイクロソフト社のAzure、Power Platformを活用してISMAPに準拠したセキュリティを確保しつつ、工期を圧縮した。

いかがでしたでしょうか。

DXに詳しい人材がいない、DX化したくても資金がない、などの理由でDX化を躊躇している中小企業も多いのではないでしょうか。 

今のやり方にさほど問題を感じていないと、やり方を変えることには抵抗があり、不安もあるでしょう。 

しかし、導入した場合としない場合で、働き方や生産性だけでなく企業価値にも大きな違いが出てしまうとしたら、見て見ぬふりをしているわけにはいきません。 

この機会にDX化について具体的に検討してみてはいかがでしょうか。

PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部

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