3Dコミュニケーション・プラットフォーム「ROOV」とは
新築分譲マンションは一生のうちで最も高価な買い物と言っても過言ではないでしょう。
ローンを組んだり貯金をはたいたりするのですから、立地、間取り、内装など十分に吟味して納得できる物件を選びたいものです。
しかし、チラシが配布される頃はマンションが未完成で、外観の完成予想図や小さな間取り図だけでは、部屋がイメージできない方も多いのではないでしょうか。
このような状況のなかで、住宅販売の最先端DXを推進する株式会社スタイルポートは、デロイト トーマツ グループによる「Technology Fast 50 2023 Japan」を2年連続で受賞したと発表しました。
今回は、株式会社スタイルポート代表取締役の間所暁彦様より、同社が開発・提供する3Dコミュニケーション・プラットフォーム「ROOV」についてお話をお伺いしています。
株式会社スタイルポートは2017年に創業しました。事業内容は、建築・不動産マーケットにおけるITソリューションの開発および提供です。
2019年にWebブラウザだけでVR内覧体験ができるデジタルモデルハウス「ROOV walk(ルーブウォーク)」の提供を開始、2020年には住宅販売支援プラットフォーム「ROOV compass(ルーブコンパス)」をリリースしました。
「ROOV」は、新築マンション向けのオンライン3DCG内覧サービスとして、累計導入実績No.1を獲得しました。弊社は「空間の選択に伴う後悔をゼロにする」というミッションを掲げてサービス開発と改善に取り組んでいます。
「空間の選択に伴う後悔をゼロにする」とはどのようなことでしょうか?
人生には、空間を理解して選択する機会がけっこう多くありますが、意思決定するのは難しいものです。
例えば、カーテンを買ったり、家具を買ったり、もう少し大きなものだとマンションを買ったり、家を建築したり、ビジネスでいうと街づくりなどもそうです。特に建物は一度建てたら取り返しがつきません。
「空間の選択に伴う後悔をゼロにする」とは、テクノロジーを駆使して、できるだけ手軽な方法で空間をイメージしてもらい、正しい理解に基づいて空間選びができるようにすることです。
「ROOV walk」と「ROOV compass」とは?
「ROOV walk」の概要について教えていただけますでしょうか?
「ROOV walk」は、まだ建っていない建物やアクセスするのが不便な場所にある建物を、仮想空間にデジタルツインとして再現します。
仮想空間はいつでもどこからでも見られて、みんなが自由に出入りして空間イメージを共有できます。まだ建っていない建物ならいろいろシミュレーションして最適な空間を作れますし、不便な場所にある建物でも仮想空間ならアクセスの問題はありません。
「ROOV walk」はアプリを入れなくてもWebブラウザだけでVR内覧体験ができます。よくあるVRは定点のCGが多いのですが、「ROOV walk」はそれとは異なり、部屋の中を自由に歩き回ることが可能です。カーテンの採寸、家具の配置、カラーセレクトなど生活のイメージをシミュレーションできます。
「ROOV compass」の概要を教えていただけますでしょうか?
「ROOV compass」は、価格表など物件に関する情報や周辺状況や外観などの資料をクラウドで管理し、お客様に情報をシェアできるようになっています。
モデルルームに出向いて長時間の接客を受けなくても、マップで周辺の状況を確認できます。価格表が見られるので買う気になったらローンを計算することも可能です。
どのタイプの間取りを見たとか資料集の何ページを閲覧したといったユーザーの行動を解析できるので、タイムリーに商談を進めることが期待できます。
リリース直後から評判がよかったのでしょうか?
2019年にVR内覧体験のコンテンツ「ROOV walk」の提供を開始しました。住戸内を自由に動き回れるウォークスルー機能で内覧の疑似体験が可能です。不動産ポータルサイト「SUUMO」のメニューとして提供しましたが、あまり受け入れられませんでした。
コロナ前の分譲マンションのデベロッパーさんは「商談はリアルでないと話にならない」と考えていたのです。情報を少しずつ出している段階で、VRで部屋をすみからすみまで歩き回られたら、お客様は現場に来ないのではないかと心配されました。
私もデベロッパーだったので、業界の課題はわかっていました。理論上はたぶんイケると自信はあったのですが、カルチャーが変わるのには、けっこうな時間がかかりました。
コロナ禍で、リアルな販売所を全部休業しなくてはいけない期間がありました。そこで「ROOV」がいくつか採用され、やってみたらリアルと変わらないくらいマンションが売れたのです。
顔を合わせて、口頭で説明して、腕ずくで押し込まなくては売れないと思われていましたが、リアルでなくても売れるという業界全体の気づきが2020年頃に生まれました。
コロナ禍の頃に、リアルの接客に代わる販売手段として業績が伸びていきました。
マンション購入者とデベロッパーのメリットは?
マンションの購入者からの反応はいかがでしょうか?
我々がマンション購入者の声を直接聞く機会はなかなかないのですが、デベロッパーさんが実施した購入者のアンケートでは「分かりやすくなった」「判断しやすくなった」という声が圧倒的だそうです。
我々以外のサービスも導入しているデベロッパーさんからは、「ROOV」が一番わかりやすくて購入者の評判がいいので、弊社を軸にしたいというお話をいただいています。
一度使用された担当者さんが同僚の方に薦めてくださるなど、だいたい93%がリピートで、便利に使っていただいているようです。
デベロッパーにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
リアルの営業では営業マンまかせになっていた部分が、本部の人にも把握しやすくなりました。
トップの営業マンがどのように「ROOV」を使っているかを抽出し、共有することで、これまで手際の悪かった営業マンも成績が上がるという効果があります。
不動産業界はデジタル化が遅れていました。しかし、コロナ禍をきっかけにデジタル化すると生産性が上がって便利だという認識が広がり、早いペースでDX化が進んでいます。
マンションから戸建てへ、アリーナそして街並みへ
住宅以外にも「ROOV」の活用が広がっているそうですね。
最近ではマンションだけでなく、大規模複合開発プロジェクトなど街づくりにも活用の幅が広がっています。
「ROOV.space」という新サービスなのですが、街ごとデジタルツインで再現し、プロジェクト関係者が同時にアクセスしてイメージを共有しながら検討したり、テナントさんを集めてプレゼンテーションしたり、いろいろな形で活用していただいています。
建物は単独で存在するわけではありません。街と一体となって存在します。室内、外観、街並みがシームレスにつながった3D空間で、街や建物が出来上がる前に空間をシミュレーションして、街づくりの合意形成が進むことが期待されています。
御社の今後の展望などはありますか?
「ROOV」は新築マンション販売支援だけでなく、2022年10月からは戸建て住宅での提供も開始しました。また、住宅のみならず物流倉庫やアリーナなど大規模空間の課題解決サポートも行っています。
例えば神戸アリーナは、Bリーグの試合がないときにイベントでどう活用するかが課題です。これをデジタルツインで構築して営業資料を閲覧できるようにし、ゆくゆくは仮想体験して気に入った席からWebでチケットを取るようにできたらいいと思います。
物流倉庫、アリーナ、オフィス、商業施設など住宅の領域以外にも活用の幅を広げ「空間の選択に伴う後悔をゼロにする」ミッションの実現に向けて、さらなるサービスの開発と改善に取り組んでまいります。
key point
- 「ROOV」は、まだ建っていない建物やアクセスするのが不便な場所にある建物を、仮想空間にデジタルツインとして再現する。いつでもどこでも見られて、みんなが自由に出入りして空間イメージを共有できる。
- 「ROOV walk」はアプリを入れなくてもWebブラウザだけでVR内覧体験ができる。部屋の中を自由に歩き回り、家具の配置、採寸、カラーセレクトなど生活のイメージをシミュレーションできる。
- 「ROOV compass」は、物件に関する情報や資料をクラウドで管理し、顧客に情報をシェアできる。顧客の行動はログ解析で確認できる。
いかがでしたでしょうか?
営業マンの説明を聞きながらモデルルームを見ることも大事ですが、はじめてだと何をチェックすればいいのか、自分の希望の条件が何なのかもまとまっていないことが多いのではないでしょうか。
窓から一歩ベランダに足を踏み出して戸外の街並みを眺めてみる。
キッチンに立って洗面所やバスルームへの動線を確かめてみる。
仮想空間内なら思う存分歩き回ったり、思いっきり内装の色を変えてみたりできそうです。
リアルなモデルルームに行く前に一度デジタルモデルハウスをのぞいてみてはいかがでしょうか。
株式会社スタイルポート
https://styleport.co.jp/
ROOV
https://styleport.co.jp/roov/
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TEXT:PreBell編集部
PHOTO:iStock
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