オンライン自習室「Herazika」はなぜやる気を使わなくても勉強できるのか
「勉強しなさい」と何度声掛けしても、子どもはゲームばかりやっていると嘆く親が多いのではないでしょうか。
そういう親自身も英語習得に挫折したり、資格試験の勉強がはかどらなかったり、勉強がうまくいかない経験をしています。
大人も子どもも、なかなか机に向かえなかったり、家で勉強しても集中できなかったり、自分だけで学習するのは難しいものです。
このような状況の中で、株式会社Herazika(ヘラズィカ)はやる気を使わないオンライン自習室「Herazika」を提供しています。
今回は、株式会社Herazikaの代表取締役森山大地様よりオンライン自習室「Herazika」ついてお話をお伺いしています。
株式会社Herazikaは2020年に創業し、やる気を使わないオンライン自習室を開発・運営しています。
2021年に小学生向けのオンライン自習室「ヤルッキャ!」の提供を開始しました。「ヤルッキャ!」では、親の声掛けがなくても子どもが自ら机に向かい勉強に集中する環境を用意しています。
「ヤルッキャ!」の経験をもとに、2023年には大人向けバージョンのオンライン自習室「Herazika」の提供を開始しました。
オンライン自習室「Herazika」とはどのようなものなのでしょうか?
簡単に言うと、人間の怠惰性をいかに解決するかということです。「Herazika」はユーザーに対して、やるしかない環境を提供し、ラクに机に向かえてラクに集中できるサービスを提供しています。勉強の内容は資格試験、語学、読書、日記など、基本的には何でもOKです。
使い方はとても簡単です。まずカレンダーに勉強する時間を事前に設定します。1コマ25分で何コマでも予約可能です。時間になったら入室ボタンをワンクリックするだけです。
勉強を始める前に運営が音頭をとり、座ったままできる簡単な準備体操を行います。その後25分学習して、最後にみんなで拍手して終了です。スマホやタブレット、PCのインカメラで勉強のようすを映しますが、ぼかしをかけています。マイク機能はないのでメンバー同士の会話はできません。
一蓮托生チームで机に向かうしかない
一般的なオンライン自習室とはどのように違うのでしょうか?
オンライン自習室は、一人で勉強しても集中しきれないという部分を補完します。しかし席に向かうまでを設計しないとオンライン自習室を継続的に使うことはできません。
では、どうやってここに向かわせるかというと運命共同体チームにするのです。「Herazika」は学習情報を入力すると近しい人で自動的にチーム編成します。このチームを一蓮托生関係に持っていくわけです。自分が勉強をがんばると他のユーザーがインセンティブを得る確率が上がり、サボると他のユーザーがインセンティブを得る機会を失います。
個人の目標勉強コマ数を達成するとレベルが1つ上がり、チームみんなが目標を達成するとレベルが2つ上がります。レベルが上がると金銭的インセンティブとしてアマゾンギフト券が得られます。
他にも違いはありますか?
一般的なオンライン自習室の場合、大人数が集まり、映されているのは手元だけなので、自分が見られている感覚はあまりなく退出もしやすいものです。「Herazika」はあくまで全身を映したうえでぼかしています。
知り合い応援団というオプション機能があります。ラインの友だち一覧から選んだ知人に対して、自分の学習中の様子が自動的に送付されるという機能です。プレッシャーもあるし格好悪い姿は見せられないからと、友だちや上司、自分の娘に設定する人が多いようです。
孤独感が強く仲間と一緒に頑張りたいという人もいれば、レベルが上がるとアマゾンギフト券が送られるというゲーム性を好む人もいて、刺さるポイントは人それぞれです。「プレッシャー」と「報酬」と「人とのつながり」の3つがうまくハマって長期的に成果が出るように環境を設計しています。
起業のきっかけがユニークだと伺いました。
ヤフーに入社したのですが、有給が1年間に20日しかない生活をずっと続ける自信がなかったので、5年くらいで一旦休もうと思っていました。
ちょうど新規事業開発で失敗したタイミングで退職、その後3年間ニート生活を送りました。でも暗さは一切ない明るいニートです。デンマークで2年大学院に通い、日本に帰って来ました。
5年もの空白期間を経て、自身が社会的に死んだと感じていたため、起業する以外の選択肢はありませんでした。
起業したのはほかに選択肢がなかったからですが、選ぶテーマに関しては自分の好きなことをやろうと思っていました。
ADHDのせいかもしれませんが、もともと自分はかなり怠惰でした。とにかく机に向かえないし、向かってもいろんなことが気になって5分と続きません。娘も怠惰で、妻に毎日勉強しなさいと怒られているな、これをどうにかできないか、と考えたのが最初のサービスです。
世の中のほとんどの親は子どものやる気を過信しすぎです。当初の目標は、親が声掛けせずとも子どもが自分から机に向かい、集中することでした。最初のテストのときからある程度ユーザーに刺さったのを感じていました。
やる気に頼らず、やるしかない環境を作る
子ども用の勉強室は「ヤルッキャ!」ですね。大人用「Herazika」との違いはあるのでしょうか?
「ヤルッキャ!」は、チーム設定はなく個人プレーであるなど、大人用とは少し違っています。ライン応援団と似ていますが、子どもが頑張った様子は録画され、メールで親に送られます。
設定した時間に机に向かったらポイントがもらえて、できなかったらポイントは預かります。1ポイント1円でアマゾンギフト券と交換できるという、自分の行動がお金に直結するしくみです。
テストの段階で、親の声掛けがなくても子どもが机に向かって集中している様子が見てとれたので、サービスに落とし込みました。
子どもだけでなく大人も勉強に集中するのが難しいのはなぜでしょうか?
人間は元来怠惰ですからやる気に頼るのは無理です。約250万年の人類史の中で文明時代は5,000年程度、たったの0.2%です。僕らの脳はマンモスを追いかけていた頃とさほど変わりがありません。生死に直結しないことを頑張るのはそもそも不自然なのです。
脳生理学者 有田秀穂氏はドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンの3つのホルモンを「心の三原色」と表現しています。やる気に頼る必要がない、やるしかない環境とは、3つのホルモンバランスがそろった状態です。
ドーパミンは報酬、ノルアドレナリンはプレッシャーで動かされ、セロトニンは応援や人とのつながりで作られます。「Herazika」は、ホルモンバランスがそろった状態を疑似的に作り出します。
「Herazika」でB2B2Cビジネスを展開
資格の学校TACに協力されていますね。
資格取得のためにTACさんにかなりの受講料を払っているにもかかわらず、途中で辞めてしまう人がいます。理由のほとんどは、自学習が続かず、予習復習のサイクルが回らなくなって授業に行かなくなるというものです。
生徒の自学習を習慣化できると、授業に出席するようになり、資格試験のときまでTACに在籍できるようになります。
例えば、税理士を目指すなら資格試験に合格することがゴールですが、もし落ちたとしても自分が決めたことを習慣化できているということは幸福度に寄与します。この世から怠惰がなくなったら一番変わるのは質の充足感です。
御社の今後の展望などはありますか?
人間は元来怠惰です。怠惰でもいいのですが、怠惰をコントロールできたらハッピーだなと思います。
リスキリングなど学習の必要性は今後増えていくことでしょう。今まで続かなかった勉強が続く仕組みが安価に大量に広まれば、社会が変わると思っています。
専門学校、英会話スクール、リスキリングを推進する企業など、勉強しなくてはいけない社会人がいる法人様に「Herazika」を提供して、B2B2Cビジネスを展開してきます。
key point
- 人間は元来怠惰だからやる気に頼るのは無理。
- 「Herazika」はユーザーに対して、やるしかない環境を提供し、ラクに机に向かえてラクに集中できるサービスを提供する。
- 「Herazika」は「プレッシャー」と「報酬」と「人とのつながり」の3つがうまくハマって長期的に成果が出るように環境を設計する。
いかがでしょうか?
2022年、政府は個人のリスキリングの支援について、5年で1兆円を投じると表明しました。
リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」(経済産業省)です。
転職先で活かすためにしても、今の職場で必要になるにしても、この先リスキリングを避けて通ることは難しそうです。
リスキリングをやるしかない方は、一度やる気を使わないオンライン自習室を試してみてはいかがでしょうか。
Herazika
https://herazika.com/
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PHOTO:iStock
TEXT:PreBell編集部
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